とある先輩からメールが届いて、その内容を読んで驚いたのだ。「大学院大学に就職の口あり、向こうは君に興味がある。まずは会ってみろ。」これまで色々とアドバイスを頂いた人からのメールなのである。大きく胸が高鳴った。すごいチャンスである。会うだけでもしておくべきか、とも考えた。しかし、しばらくして受ける気もないのに会うだけというのは失礼である、と思い直した。そう、俺はもう新しい道を歩み始めているのだ。
就職して一ヶ月強、現在の職場は慣れないことも多くて苦労している。一社員として、年を食った下っ端として非常にやりにくいこともある。周りの職員は一回りも若い人間が多く、体力の差も尋常では無い。しかし、しかしながらこの下っ端としての経験、教育者達の考え方、これらをじっくりと吸収して消化しないと先へ進めない。今、俺はブレている場合ではないのである。
もちろん、研究職が嫌というわけではない。ただ、自分で研究を遂行できない環境である、自分の関心のない研究を人の下で行う、これはもはや難しい。それではお金を稼ぐための研究になる、研究の目標がお金を生むテーマになる、これだけはどうしても自分の中で受け入れられないのである。これは、一介の研究者が口にすべきでない贅沢な言葉だけれども。
とは言うものの。
やはり慣れない仕事を続けていると自分の本来の職場に戻りたいという感情がどうしても消し去れないのである。逃避ではない、アメリカでの経験をもって入れば、日本の研究室をより素早く改善できる、いやそれだけではない、早く改善しないと日本の科学はダメだ、そんな大きな自負があるためだ。日本の大学の教授たちと話して、「ぜひとも頑張ってもらわないと」と言ってもらったためだ。もちろん、現在俺が目指す所も新しい研究環境を創り出すという作業なんだが、そういう外側から詰めるよりも、中に入って色々と作業する方が楽だし、間違いなく楽しい。現時点で、こういう職に先はないと言われるが、逆に数年間で周りの状況を変えれば良いのである…
さて、俺は止まることなく前に進む。それはそこに人がいないからだ。そこは全くの未開の地だからだ。そうして時代はどうしようもなく切羽詰まっているからだ。
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