本日も昨日に引き続き就職希望先との面談、ではなく、その会社が行う中学校への出前講義の見学である。何と、中学校三年生が全員、マサチューセッツ工科大(MIT)の研究室を訪問するんだそうだ。MITと言えば、世界でも屈指の研究室が集まっている大学だ。ただ、訪問の目的は知らない、分からない。むしろ、理解できるとは思えない。ともあれ、その生徒達に、英語で分子生物学の基礎を実験を交えて講義するのだという。俺にとっては就職希望先の会社の活動である。大いに期待していた。
講義の内容は面白かった。さすがにうまくやる。実はそこにBritish Councilの人も見学に来ていた。色々と提携できないかと考えているらしい。イギリス英語だ。そこで「俺はBroken “American” Englishを話す、つまりBroken “Broken” Englishだ」と言うと、受けてた。嬉しかった。うん、どうでも良い話だ。今回の中学生がどれほどの知識を持っているのか知らなかったが、意外と色々なことを知っているので驚いた。その中で、講義の後半を「科学について」学ぶように仕組まれていたのは良かったと思う。
中学校のこの専攻は理系のエリートを育成するという目的で設立されたというような話を聞いた。まあこの時点で話についていけないんだが、どうしてMITなんだろうね。確かに、MITは素晴らしい。俺もボストンの方で研究をしている時、所属する研究室がMITのロボット工学の研究室達と共同研究を行なっていたので、そのボス達と幾度か話したことがある。しかし、素晴らしい研究室は世界中にいくらでもあるのだ。隣のハーバードにも素晴らしい研究を行なっている研究室がたくさんあって、その講演には皆がうならされていたし、川を挟んで隣のボストン大しかり。むしろ、日本にも個性的で新しい分野を開拓している研究室がいくらでもあるのである。
“最先端”という言葉と、“MIT”というブランドに惑わされていないか、と思うのである。最先端科学、って何ですか?“最先端技術を使って”お金と人をたくさん使って行う研究が最先端科学ではないのですよ。
私は、「やっぱりMITだから良い研究ができるんだ」という変な誤解を生徒たちに与えないか心配なのである。「名門大学はお金を持ってるから、良い研究ができるんだ」そんな誤解を与えてしまわないか、心配なのである。俺としては、理科室に毛が生えた程度の研究室で、古い装置を使って誰にも真似できない新しい研究を行なっている研究室を訪問し、「何だ誰でもアイデア一つで世界と対等に渡り合える研究ができるんだ」ということを認識してほしい。
ともあれ、今回の訪問を通して、生徒達には何かしら“科学”のエッセンスを感じてもらえればと願っている。