会社のプロジェクトリーダーとしての最後の週に入った。俺の仕事は今週末で契約期限が満了する。そんな中、妻が子供を連れてオフィスを訪れた。見学だ。
先だって日曜に出社した時、俺は子供達を連れてきた。従って、子供達にとって会社を訪れるのは2度目である。俺は子供達に職場を見せるようにしている。アメリカでポスドクをしている時も良くラボに連れてきた。長男はイントラの実験も経験しているし、他の子供達もクラゲの世話を毎週のようにしていたもんだ。学生たちともよく遊んでもらっていたし、彼らのロボットも解説して教えてもらっていた。俺は、親の職場を見ることが子供達にとって非常に大きな影響を与えると考えている。親父がまじめに働き、時には叱り時には叱られ、そんな社会の中における親父を見ることは、親父を知り、将来を考える上で大きな助けになるだろうと思うからである。ところが、日本に帰ってサラリーマンになると、住んでいる場所が職場から離れてしまったということもあって、いや何よりも忙しくて子供を中々オフィスに連れてくることができなかった。俺は必ずサラリーマンのオフィスを見せたかった。サラリーマンの仕事を見せたかった。彼らが知っている仕事は、何せ研究だけなのだ。これから半年もの間、親父と会えなくなり、そうした時に親父が何をしているのか分かれば、俺の言葉の感じ方も変わってくるだろう。
日本の会社で、子供をオフィスに連れてくることが一般的にどれほど非常識なのか、あるいは問題ないことなのか、俺は知らない。しかし、現在の職場は若い女性社員が多く、皆が可愛いだとか、賢いだとか、会いたいだとかいうので(親バカではないよ、事実なんだから)、許可をとって連れてきたのである。で、子供達は二度目ということで慣れていて、勝手に色々と持ちだして各々遊び始めた。三男は不機嫌で、女性社員が可愛く声をかけてもジロリと睨んでソッポを向く始末。昼になればお気に入りのドラえもん弁当を食い、長男はおかわりが欲しいと言い出し、折角大盛りを注文した俺のご飯をごっそり取って食い終わったプリンの容器に入れて幸せそうに味わい、バタバタ遊んで帰っていった。
俺は、彼らが何を感じたのか知らない。生き物が必ずいた研究室と違って、デスクだけが並んでいるオフィス、女性が多く、皆が日本語を話している職場。親父が一日の大半を過ごしている職場である、どんな感じだったろうな?
私が小学生になる前の頃、何度か職場に連れて行ってくれた親父。しかし、バブルが弾けるぐらいから家族の世話すらなかなかできずに仕事に邁進するしかないサラリーマンであった。
しかし、私の幼少時代には、休日に親父の生家で五右衛門風呂や槙割り、田植えに、草刈、ミカンの木の手入れ、杉林や竹林の手入れ、椎茸の原木を仕込んだりしました。七輪やストーブでお湯を沸かしお茶や食事を共にしたもです。
幼い頃、親父の会社のオフィースを見たが、味気ない感じで、休日の農作業の方が活き活きしていた。
親父は、現場で木工機械の修理をする仕事で、オフィスは苦手だったのでしょう。でも、そんな職場に連れて行った意図はなんだったのか?今でも不思議に思います。
不器用な親父は、職場の人付き合いも苦手なはずなのに…。