アメリカの友人から、俺らが3年住んでいた家の大家さんが亡くなったとメールで連絡があったのである。俺らが帰国してから10ヶ月後のことだ。85歳だったという。3階建の豪邸で、我々は一階部分を借りていた。近くに親類のいない息子達にとっては、おばあちゃんだった。雪遊び用のソリを買ってくれたり、ハロウィーンには息子達にギフトを用意してくれていたり、3mほどのクリスマスツリーを切り倒して家の前に立てておいたら、小さなギフトを知らぬ間に木にくくりつけておいてくれたりして驚かされたりもした。息子達も、彼女が荷物を運ぶのを手伝ったり、掃除を手伝ったり、色々とした。我々がアメリカを去る時はお互い涙した。彼女の歳も歳だ、こうなることはそう遠くないとは思っていた。帰国際に隣人たちが、我々が越してきてから彼女の表情が非常に明るくなったんだと言ってくれて、非常に嬉しかったものだ。
帰国の半年前頃から「何とかここに留まる術はないのか?」と彼女に幾度となく聞かれるようになったのは非常に辛かった。どこそこの娘さんはあそこに就職できたから聞いてみてはどうか、という話まで持ってきたこともあった。そんな中、彼女の妹が亡くなり、ますます離れ難くなったのである。我々が家を離れてから彼女は急に衰え、一年待たずして亡くなったと聞いて何とも言えぬ気分なのである。とは言え、絶対離れないと我々にも宣言していた家で家族に囲まれながら亡くなったとのこと、温かく最後を迎えることができて、それは非常に嬉しい限りである。ご冥福をお祈りします。
アメリカを去る二日前の記念写真。同じく仲の良かった近所の夫婦と一緒に。