連日にわたって取引先にお詫びの電話を入れたのである。こちらのミスで取引先に迷惑をかけたのだが、そのミスを修正したつもりでいたら実は修正されておらずまだ直ってないと言われ、それが数日続いた。低心低頭謝った。何よりも申し訳なかった。周りの社員が、俺の余りの丁寧さに驚いていた。
電話口でこれほどに謝罪したのは生まれて初めてだろう。顔が見えない相手に、しかも修正すると言ってから連日電話をかけて修正されていないことの確認である。辛かった。しかし、それでも電話で素直な気持ちで謝罪できたのは、迷惑をかけられた相手の気持がよく分かり、何とかしたかったからである。これは、プロジェクトへの思い入れが非常に高いためでもあろう。
俺が研究者の頃は、外部と強いつながりが殆ど無かった。謝罪することはあっても、相手は例えば研究室のボスだとか、身近な人間が多かった。それに対して今回は会ったこともない相手に電話しないといけなかった。いやあ、本当に緊張しましたよ…
今回、そういった状況で丁寧なお詫びができたのは、ひとえに中学・高校で非常に上下関係の厳しい陸上部、山岳部でしごかれたおかげであろうと思う。研究者の頃、議論ができないからと上下関係を完全否定し、敬語さえも否定していた俺が、今、その敬語に助けられているのである。