科学者の転職記

キビ倒しと仕事

 妻の実家にはサトウキビ畑がある。2月になればその収穫時期を迎え、親類が集まってキビ倒しを行う。その実家に住む俺は、当然ながらその一員である。サトウキビは2m以上にも成長し、遠くから見ればトウモロコシのような形で、収穫時には穂を先端から伸ばす。キビ倒しは、まず葉っぱの部分を切り落とす首刈から始まる。実はサトウキビの半分以上は葉っぱ部分で、糖分が殆ど無い。もし糖分が無い部分が多いと、糖度検査で大きく損をする可能性があるので極力混ぜないようにしないといけないのである。そして次に根っこの辺りから切り倒す作業になる。切り倒した後は糖分がない葉っぱを削ぐ。それを10本くらい単位でまとめて、道路近くに山積みにしていくのである。束になったサトウキビは、重い上に、不安定で運ぶのが大変だ。特に、何を考えているのか、おじさんによっては一束にまとめられたキビの数が妙に多いことがある。そういう束に当たると、何とか肩に背負い上げて、フラフラと畑の端まで歩いていくことになる。またサトウキビの茎は竹のように固く、これが鎖骨をゴリゴリ押すのだ。しかも、一本一本別々の方向にしなるもんだから、厄介この上ないのである…

 さて、ここで言いたいのはサトウキビ畑の作業についてではない。俺の仕事は、情報を売るような仕事だ。要するに、人に金を出させてそれを生業としている。現在やっている仕事を少しマクロに見た時、結局他人にいかにお金を使わせるか、お金を自分の方へ流すか、その道筋をつける作業に過ぎない。そんな中、一次産業に関わると非常に新鮮な気分になるのである。単純に言い切ることはできないが、一次産業はお金の元を創り出している、人の金を吸い上げているのではなく、自然からの恵みを直に受け取っているという感覚が、得も言い得ぬ清々しさをもたらすのだ。ただ、農業では生きていけないし、農家として生きていくには、俺には何かが足りない気がする。

 俺は現在の仕事が楽しく、夢中になっている。だが、こうした色々な世界を垣間見て、そこから色々と学んでいきたいものだと考えているのである。

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