先週、尊敬する先輩から携帯に電話がかかってきた。仕事の話が来たのである。この人と一緒にやっていけたら日々が興奮で満ち溢れるだろう、そう思わせる人だ。実は、一度は一緒にやっていこうと決心した先輩である。帰国直後にポスドクの仕事があるんだが、と声をかけていただき、単身赴任になるがやっていこうと一度は決心したのである。しかし、二人で話して、将来の見込みがないこと、そして給料が低い事を理由に断念したのである。3年契約ではあるが次の就職を考えると2年で成果をあげないといけなくて、しかもこれまでと全く異なる医療界で技術も新しい、さすがに厳しい賭けになるだろうというわけだ。
それに対し、今回の仕事は4年契約で、しかも給料が以前のものより良い。しかもしかも、仕事の内容がこれまで俺がやってきたことに近い(イントラだ)。これなら何とかなるかも知れない。何より、現時点では定職に就けるかどうかも不確定だ。ただし、やはり彼は言うのである。それでも前回同様将来に見込みがあるわけではないんだ、と。悩んだ。実に悩んだ。例え短時間でも彼と一緒に過ごせればその時間は人生の大きな糧となるのは間違いない、しかし、である。俺は新しい道を選んで歩み始めている。これを戻せば、どうせ研究にも専念できず、中途半端になるのは目に見えている。
アホなんだろうな、こんな生き方。少し考えればもっとうまく立ち回れるだろう、と思うのである。しかし、中途半端に歩み始めたら、もはや俺の人生は腐ってしまうように思うのである。俺は弱い人間だ。色々とでかいことを書いているが、適当にやって適当にうまくいきゃ最高なのだ。ところが、俺の能力から考えて適当にやってできることは非常に限られている。全身全霊を注ぎ込んで、ようやく一人前の仕事ができるかどうかなのだ。そんな人間だから、本当に大切な一つのことに集中しなければいけないのである。新しく会社に入社して、新入社員として下積みから始める覚悟をしたのだ、着実に歩み続けなければならない。
そんなことを考えて、俺は断りのメールを書いた。