科学者の転職記

青少年の家での仕事:野外炊飯

青少年の家の一大イベントと言えば野外炊飯だ。8釜の野外炊飯棟が二棟もある。中々の圧巻である。そこで火を使った飯の作り方を指導するのだが、手取り足取り教えるなんてことはしない。ヒントを与えて考えさせるようにしている。特に最大の難関が言うまでもなく火の維持である。そこで、火というのは上に伸びるのだ、というヒントで薪の置き方などを考えさせる(最初にいくら説明しても必ず聞いていない輩がいるもんだ)。意外と経験者でも失敗する。我々の薪は家具に使われる非常に乾燥した木材である。火がつかないわけがないのだが、それでも「消えました」という声が毎回上がる。消えそうになった火を起こすのに空気を吹き込めば良いことは小学生でも知っている。だが空気を入れるとどうなるのかを知らない。なので適当に空気を入れて炎を消してしまって、それで諦めて新聞紙を大量に詰め込もうとするのである。それを引き止めて、俺が更に息を吹きかけて炎を起こすと、驚嘆の声が上がる。「さすが」と言われる。これは気持ちいい。で、俺のやったことを説明してやると、たまに「何だ、そんなことか」となる。そういう時は「そんな些細なことに気付くのがどれほど難しいことか、よく分かるだろ?」と諭してやるのだ。
 面白いと思うのは、日ごろ家で使っているガスレンジでの調理が、“火”を使った調理であるという認識が弱いことだ。火で料理するのは難しいです、というコメントを聞くことがある。「いや、いつも使ってるでしょ」と話し、何が難しいのか考えさせる。また、色々な説明の際に、ガスレンジの構造と薪の火の構造を比較してやると、すぐに納得してもらえる。こうした経験を通して、文明の有り難さを実感するのである。これが、野外における教育なのである。

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