次の出張に関して社長に呼ばれ悩んでいる状況を報告をすると、もっともっとお客様に対する思いやりを持つよう指導された。お客様の背景を推察することも大切だと。なるほど、そりゃそうだと感心しながら、今さらながら商売は難しいものだと思った。誤解を恐れずに言うと、例えば科学の場合、脳機能のある回路を解明するにはAという動物が材料として有用だった場合、Aを扱う研究者数は限られるためその道のトップに立つことはそれほど難しいことではない。ところが商売における材料は“ヒト”すなわちお客様で、全員がそれに向き合っている。業界の人全員が商売敵で、その中で上り詰めるのは至難の業だ。聞けば非常に当たり前のことなんだけれど、実際に直面すると少し面食らう事実だ。例えば参加者が3万人を超える学会に行って全員が一つのセッションに詰めかけるのを想像して欲しい。現在私は沖縄の観光業界に身を置いているわけだが、業界に携わる人間全員が「お客様をいかに多く獲得するか」という恐ろしいくらいに単純明快な目標を持って走っている。その際に大きな武器となるのは人のつながりや独創的なアイデアであって差別化が非常に難しく、年の功というのが大きな力になる。私は年は一人前に食っているが功がない。とすれば独創的なアイデアで勝負しないといけないんだが、それを生むのは経験で、活かすのは人のつながりなのだ。年功序列制度というものは、あながち経験上醸造されたシステムなのかも知れないね。
ま、そんな事言いながらも考えてみりゃ科学も立派なビジネスなわけで、お金を取るためには様々な人脈を駆使しないといけないのは商売と変わらんか…